Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI
『フリーダ・カーロの遺品 −石内都、織るように』の中には、舞台となったメキシコの様々なカルチャーが登場します。 近代メキシコの激流の中で、トラディショナルな衣服、文化を自身の表現に取り込んだフリーダ・カーロは、独自のポップな解釈をしつつもメキシコ史の体現者でもありました。 そんなフリーダ・カーロを取り巻くメキシコ・カルチャーの一部をご紹介します。
基本情報
メキシコ 地図 国名:メキシコ合衆国
人口:1億2233万人(2013年統計)
面積:197平方キロ(日本の5.3倍)
首都:メキシコシティ
人種:ヨーロッパ系15%、ヨーロッパ系と先住民の混血60%、先住民25%
言語:スペイン語、先住民はそれぞれ独自の言語
宗教:カトリック(9割)とプロテスタント
国旗:緑・白・赤の縦縞。スペインから独立するときに掲げた3つの保障、緑はスペインからの独立、白はカトリックへの信仰、赤はメキシコ人とスペイン人の統一を象徴。中央の「ヘビをくわえたワシがサボテンの上にいる紋章」は、アステカ帝国建設にまつわる伝説にちなんだもの。ワシはメキシコの国鳥。

 

@ブルーハウス/Casa Azul
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

フリーダが生きていた痕跡を感じる、映画の主な舞台
首都メキシコシティの中でも閑静なコヨアカン地区にあり、映画の冒頭から登場するフリーダ・カーロ博物館、通称「ブルーハウス」。フリーダの生家でもあり、最期の住まいでもあったその家は、現在ではそのまま博物館になっています。鮮やかな青い壁で囲まれた邸宅は、近代メキシコを代表する画家でもある夫、ディエゴ・リベラと暮らした家でもあり、ソ連から亡命してきたレオン・トロツキーがかくまわれたりと、近代メキシコの歴史的にも重要な建物でもあります。
ブルーハウスの中庭には、フリーダが収集した古い石像が、建物内も食堂や居間、アトリエでは実際に使っていた絵具、キャンバス、車イスが当時のままの様子で展示されています。寝室にはフリーダのデスマスクが安置されており、フリーダがここにいた痕跡を随所で感じることができる場所です。

 

Aテオティワカン遺跡/Teotihuacan
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

壮大な遺跡からメキシコの歴史を体験する場所
メキシコシティの北東約50キロの地点にあり、紀元前2世紀から6世紀まで繁栄した、テオティワカン文明の中心となった巨大な宗教都市遺跡。「神々の都市」という意味で、これは12世紀頃にこの地にやってきて、廃墟となっていたこの都市を発見した、メシカ人(アステカ人)が命名しました。16世紀にメキシコに征服されるまで、アステカ帝国の信仰的な中心地でもありました。

その中央をほぼ南北四キロにわたって走る「死者の大通り」沿いに、「太陽のピラミッド」「月のピラミッド」「城塞」といった巨大なピラミッドや神殿群が無数に立ち並ぶ実に壮大な遺跡です。ピラミッドの中心点に銀の石が埋めてあり、これに太陽のパワーが集まると言われています。

 

B死者の日/Dia de los Muertos
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

陽気な死者=ガイコツが踊るメキシコの“お盆

毎年10月31日から11月2日にかけてはメキシコのお盆にあたる「死者の日」と呼ばれています。亡くなった家族を迎え入れるだけでなく、盛大なお祭りがメキシコ全土で開催される期間です。もともとはカトリックの祝日ですが、メキシコでは2500〜3000年前から死者の魂を弔う伝統があり、死者=ガイコツを明るく受け止めている文化が根付いているそうで、期間中は街のいたるところでお祭り騒ぎが繰り広げられます。墓地では、死者の魂を呼び寄せると言われているマリーゴールドの香りが漂う中で、先祖を迎え入れようとする人々がろうそくの火を灯して、静かに佇んでいました。

 

Cオアハカ/Oaxaca
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

世界的な注目を集めるフォークアートの宝庫

メキシコシティから高速バスで7時間ほどの距離にあるオアハカ。オアハカを州都とするオアハカ州は8つの地方に分かれていて、メキシコ国内で最も先住民族の割合が多く、16の民族が居住していると言われています。その民族ごとにさまざまな特徴を持つ民芸品(織物、刺繍、陶器、雑貨等)が作られており、「フォークアートの宝庫」として世界的に注目を集めている地域です。近年は日本でも、オアハカのフォークアートを愛好する人が増えています。

 

Dテワナ(ドレス)/Tehuana(dress)
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

オアハカ州イスモ地方特有のドレスはフリーダのアイデンティティの源だった
刺繍だけでもオアハカ州の各民族それぞれの特徴がある中で、“花の咲く場所”という語源を持つイスモ地方では大きな花をモチーフにしたものが多く、その刺繍をあしらったドレスが映画にも登場します。フリーダ・カーロの母・マティルデの出身はオアハカ州のイスモ地方であり、フリーダが身に着けていたトラディショナルな衣服は、イスモ地方のものをアレンジしたもので、メキシコ先住民族と、西洋人の両方の血を引いたフリーダ自身のアイデンティティを表現する衣装でもありました。映画ではオアハカの女性たち、ダンスを披露してくれたアドリアーナ・ラモン・グズマンさんが自慢のドレスを披露してくれました。

 

E刺繍/Bordado
Documentary featurefilm The Legacy of  Frida Kahlo directed by Tadasuke KOTANI

女たちが丁寧な刺繍を施すドレスは、親から子へと受け継がれていく

映画に登場するイスモ地方の刺繍は、かぎ針を使用するガンチョと呼ばれるチェーンステッチと、ミシンによる機械刺繍のカデーナが代表的なものです。もともとはスペインから伝わったとされるカデーナが主流だったようですが、1940年代ごろから大輪の花のモチーフが広がってきたそうです。映画に登場するテレサ・ロペス・ヒメネスさんは、その両方を手掛ける刺繍作家。気の遠くなるような細かなチェーンステッチで花の輪郭を刺していく手法は、鮮やかで生き生きとしており、独特の立体感が魅力を放っています。映画内でも語られているように、丁寧な刺繍が施されたドレスは長く愛用され、親から子へと受け継がれていきます。